ばらまかれた絵の具のチューブ、ゴロゴロと転がる石膏像や陶器、その他の画材や用具が充満するアトリエの中に、魅惑的な白い裸体が浮き出ている。
「この人が、『煙突屋』のカンちゃんよ。
お気に召して、今日子さん?」
遠見夫人の問いかけに、今日子は黙ってうなずく。
「ああ、よかったわ。
じゃあ、私、ここで拝見させていただくわ。
さあ、カンちゃん……」
その言葉に促されるように、男は一歩前に進んだ。
丁寧に一礼して
「失礼します」
と低く、小さな声で言うと、ガスマスクの奥の今日子の視線にピタリと自分の視線を合わせながら、服を脱いでいく。
筋肉質の上半身をさらけ出した後、男は下着ごとズボンを引き下ろした。
今日子の目は一点に注がれた。
(すごい……!)
そのつぶやきは、ガスマスクの外に漏れ出ることはなかった。
しかし、全裸になった男が再び今日子の前で直立したとき、感嘆の度は、より一層大きくなった。
(もう、こんなに立ってて、大きくて、太い。
それに、先っぽがキラキラ濡れてて、キレイ)
屹立している男根に喉を刺し貫かれたような錯覚を覚えて、今日子はその場に崩れ落ちそうになった。
よろめきを必死に堪えて、背筋をピンと伸ばし、くぐもった声で
「こちらに、いらっしゃい」
と命じた。
そこから手がさわさわと肩先へと移動する。
(気持ちいい……上手だわ。
でも、そんなヤワな愛撫じゃなくて、アノ感触が欲しい……)
今日子は、プリプリと張った尻を後ろに突き出した。
しかし、ペニスに触れることはできない。
臀部への愛撫をせがまれたと思ったか、男の手は丸い尻肉を撫で回す。
この年齢になっても、全く垂れていないのが今日子の自慢だ。
(そんなんじゃなくて、躯をピッタリ合わせて抱いて欲しいのに……)
今日子は男の片手を取ると、腕を自分の躯に巻きつけるようにして、肌を密着させようとする。
そのとき、偶然に若者の指が下腹部に触れ、パチパチッと軽い電撃が躯を走る。
今日子は、男の手首を掴み、女陰へと導く。